
"3分で読める"マーケティングに関するコラムの第5回です。
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【第5回】戦略を形にする:4Pと4Cのマーケティング・ミックス
戦略から戦術へ
STP分析(第4回)によって、「誰に(Targeting)」 「どのような価値で(Positioning)」戦うかという、戦略の骨格が固まりました。
次に行うのは、その戦略を具体的な行動計画、すなわち「戦術」に落とし込むことです。
このプロセスで用いられるのが、「マーケティング・ミックス」と呼ばれるフレームワーク
であり、
その代表格が「4P」です 。
これらは、マーケターがコントロールできる具体的な手段(レバー)と言えます。
4P:企業視点の4つの要素
「4P」は、企業が製品を市場に届けるためにコントロールすべき4つの基本的な要素の頭文字をとったものです。
- Product(製品)
顧客に提供する製品やサービスそのもの。
機能、品質、デザイン、ブランド名、パッケージ、保証などが含まれます。
STPで定義したポジションにふさわしい製品であることが必要です。 - Price(価格)
製品の価格設定。
製造コスト、競合価格、そして最も重要な「顧客が感じる価値」を基に決定されます。
価格は品質やブランドイメージを伝える強力なメッセージでもあります。 - Place(流通・チャネル)
顧客が製品を購入できる場所や方法。
オンラインストア、小売店、直販営業、代理店など、ターゲット顧客が最も利用しやすいチャネルを選ぶ必要があります 。 - Promotion(販促)
製品の価値をターゲット顧客に伝え、購買を促すためのコミュニケーション活動。
広告、PR、SNS、セールスプロモーションなどがこれにあたります。
これら4つのPは、それぞれが独立しているのではなく、互いに密接に関連し合う「ミックス」です。
例えば、
STP戦略で 「高級腕時計」 をポジショニングした場合、
- Product・・・最高品質の素材
- Price・・・高価格
- Place・・・高級百貨店
- Promotion・・・富裕層向け雑誌広告

上記のように、すべてのPが一貫性を持っていなければ、ブランドイメージは構築されません 。
この一貫性が、戦略を成功に導く鍵です。
4C:顧客視点への転換
4Pは非常に強力なフレームワークですが、その視点は「企業側(売り手側)」にあります。
現代の顧客中心の市場では、視点を180度転換し、「顧客側(買い手側)」から物事を考えることが不可欠です。
このために経済学者のロバート・ラウターボーンが提唱したのが 「4C」 です 。
- Customer Value(顧客価値)
(Productの代わりに) 顧客がその製品から得られる本質的な価値は何か 。 - Cost(顧客コスト)
(Priceの代わりに) 顧客が製品を手に入れるために支払うすべてのコスト(金銭、時間、労力)は何か 。 - Convenience(利便性)
(Placeの代わりに) 顧客にとって、その製品を手に入れたり利用したりするのはどれだけ簡単か 。 - Communication(コミュニケーション)
(Promotionの代わりに) 企業からの一方的な宣伝ではなく、顧客との双方向の対話が成立しているか 。
4Pと4Cの関係性:思考の翻訳ガイド
4Pと4Cは対立するものではなく、表裏一体の関係にあります。
優れたマーケターは、自社の4P施策を、常に顧客の4Cの視点に「翻訳」して考えます。
この思考の転換こそが、顧客に響くマーケティングを生み出すのです。
企業視点 | 顧客視点 | ||||||
4P | 思考プロセス | オンライン学習サービスを 例に考えてみると… | 思考プロセス | 4C | |||
Product 製品 | 我々は こういう機能の製品を作る | 10時間の ビデオ講座を作る | … | よりよい仕事に就くためのスキルが身に付く | 私はこの 便益・解決策を得られる | Costomer Value 顧客価値 | |
Price 価格 | 我々は この価格で販売する | 1万円販売する | … | 1万円と、 私の貴重な10時間を使う | 私の総投資額(価格+時間)はこれくらいだ | Cost 顧客コスト | |
Place 流通 | 我々は このチャネルで販売する | 自社ウェブサイトで販売する | … | 通勤中にスマホで学習できる | 私はいつでも どこでも簡単に アクセスできる | Convenience 利便性 | |
Promotion 販促 | 我々は このメッセージを伝える | 広告を出稿する | … | コミュニティで 質問できる | 私は疑問を 投げかけ、対話が出来る | Communication コミュニ ケーション |
この表が示すように、4Cの視点を取り入れることで、競合分析もより深まります。
競合の製品(Product)は良くても、ウェブサイトが使いにくく購入の利便性(Convenience)が低いかもしれません。
価格(Price)は安くても、設定が複雑で総費用(Cost)が高くつくかもしれません。
こうした競合の「
4Cの穴」を見つけ出すことで、自社は製品機能以外の面でも競争優位性を築くことが可能
になるのです。
第6回は、8月21日更新予定です。